第二言語習得の難しさ(2):夜中に学ぶ

 言葉を習得する上で、文字と発音は最初に習得する基礎であることは、誰も異論はないと思う。しかし基礎はおろそかにされる。基礎=易しい、という潜在意識があるからだろう。教わる方も教える方も先を急ぐ。

 先日、ある大学院の修士課程の院生さんたちが、私たちの夜中を見学に来た。一人ひとり自己紹介するのだが、中国籍の院生さんの発音がとても気になった。彼は「私は、【ちゅごく】から来ました。【しゅし】課程です」と自己紹介をした。あらかじめ、私たちは大学院からの見学者に留学生が含まれていることを知っているので、「中国」「修士」とすぐに分かる。逆に言えば、日本語の発音の根幹であるモーラ発音の訓練を受けていないとすぐに分かる。

 モーラ発音とは、という専門的説明を省くが、一つの文字(ひらかな、かたかな)の発音の時間的長さがほぼ一定である。日本語の発音が単調とも優しい感じを与える、とも言われる特徴である。第二外国語を学ぶとき、日本人も日本語の発音やリズムに一旦引き直して真似る。当面はそれでよいとしても。それが固定してしまうと後々修正は極めて難しい。

 教える方も教わる方も、日本語の発音の特徴をまず頭に入れておくことは基礎の基礎である。いわばピアノのハノンに例えてよいほどの基礎であろう。しかし言語習得は知識で獲得するものではないので(知識はもちろん必要である)、訓練の繰り返しを実行しなければならない。私のやり方はこうである:

①   モーラ発音とはなにかを、簡単な知識として説明する(上記の簡略的説明)。

②   簡単な日本語の単語を例にとって、ゆっくり生徒さんに聞いてもらうよう発音する(→③、④、⑤)。

③   原稿用紙のマス目(方格子)に、たとえば「せんたく」と書き込む。

④   この4文字が一つずつ、一定の時間間隔で発音されて進んでいくという、リズム感を感じるよう発音の手本を示す。

⑤   この時手のひらを広げ、指を一つずつもう片方の指で指しながら手本として発音する。

⑥   生徒さんに⑤の発音と動作を何度も繰り返してもらう。

ここまでを日本語発音の入り口としている。基礎トレーニングはこの後も続くが、教える側にとってもモーラ発音がしっかりできていないと手本にならないので、自分自身の再教育にもなる。

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