日本語と漢字(6):漢字はアイコン
漢字の特徴は一言でいうとアイコン機能を持っているということ。アイコンは一目で分かりやすい。日本語は音素が少ないために同音異句が多い言語であるので、文脈がとれない時など日本人でも「それどういう意味で使ってる?」と聞き返すことがある。「しりつ」と言えば「私立」か「市立」のどちらかであるが、敢えて「わたくしりつ」ということもある。しかし漢字で書けば一目瞭然である。山道を走っていて道路標識に「落石注意」とあれば瞬時に分かる。
いま教育漢字のレベル別漢字(例えば小学校 1 年~6年 生)を1字だけ書いたカードを用意する。学習者のレベルに合わせたカードの束から 10 枚をセットとして抜き取り、学習者 一人に例えば5秒間だけ提示する。学習者が5秒以内 に音読み、訓読みの両方(代表的なものでよい)を言えたら 5 点,どちらかだ けだと3点とする。10枚を1セットとして合計得点を記録する。これを一定期間に定期的に行 い、得点合計の変化を観察しフィードバックすると いうゲーム(チェック)を考案した。
なぜそんなことを思いついたか?それはスマホやパソコンの変換機能にヒントを得たのである。変換機能は異口同音を候補として表示してくれるので、瞬時に分かれば実用性が増す。就労目的で来日している外国人の学習者はとにかく実効性性も高めなければならない。アイコン機能とは、形状を視認すれば、意味への到達を格段に速めることである。
漢字の機能には認知心理学で「二重経路モデル」と呼ばれるメカニズムがある。第二言語学習者が初期段階では、視覚→音声化(音韻経路)を経由して意味にアクセスする傾向にあるのに対し、熟達者は視覚→直接的意味アクセス(直接経路)へと移行すると言われる。学習者が「あ、この漢字を見た瞬間に音読みと訓読みが自動的に浮かぶようになった」という体験を反復することで、漢字がもはや「複雑な図形」ではなく、「即座に意味と音を喚起する記号」として認識される転換が生じる。これが「アイコン機能の実感」である。他にもこのゲームの利点はいくつかあるのだが、ここではそれには触れない。定期的な反復練習を通して言語能力が獲得されていく。